「えっ、これ本当に発火寸前だったの?」
そう思ったのは、机の上に置いたモバイルバッテリーからじわじわと熱が立ちのぼり始めた時のことでした。普段どおりにスマートフォンを充電していたつもりなのに、突然の異常発熱。──筆者が実際に体験した、あわや事故という一瞬です。
モバイルバッテリーは、現代人にとって欠かせないアイテムです。しかしその便利さの裏に、「発火」という深刻なリスクが潜んでいることをご存じでしょうか?
しかもその原因は、粗末な使い方だけではありません。内部構造や製品そのものの“質”に起因するケースも多く存在します。
さらに「発火の確率」はどれほどなのか?──
一見レアケースのように思えても、気づかぬうちに私たちは危険と隣り合わせに暮らしているかもしれません。
この記事では、筆者の体験をもとに、
この記事でわかること
- モバイルバッテリーが発火する主な原因とは?
- 発火事故の確率は本当に低いのか?
- 危険を回避するための具体的なチェックポイント
- 安全なモバイルバッテリーの選び方と使い方
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の製品や選択を推奨・保証するものではありません。内容には十分注意を払っていますが、本記事を参考にされたことによって生じたいかなる不利益・損害に対しても、当方は一切の責任を負いかねます。あらかじめご了承ください。
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安全に使ってる?発火する原因と確率は?
モバイルバッテリーが発火する主な原因とは
発火確率と主な要因
項目 | 内容 |
---|---|
発火確率 | 一般的に、リチウムイオンバッテリーの発火確率は数百万台に1台程度とされています。 |
主な発火要因 | – 過充電や過放電 – 高温多湿の環境での使用や保管 – 物理的衝撃や劣化 – 水濡れや湿気の多い場所での使用 – 品質の低い製品やPSEマークのない製品の使用 |
使用上の注意点 | – 信頼できるメーカーの製品を選ぶ – PSEマークの有無を確認する – 高温多湿の場所での使用や保管を避ける – 充電中は目を離さない – 異常を感じたらすぐに使用を中止する |
実際の事故事例
事例番号 | 発生場所 | 事故内容 |
---|---|---|
1 | 電車内 | 鞄の中に入れていたモバイルバッテリーが何らかの要因で短絡し出火。 |
2 | 駅ホーム | 鞄の中から煙が出ているのを利用客から知らされ、鞄を置いたところモバイルバッテリーが出火。 |
3 | 映画館 | 観客が所持していたリュックの中のモバイルバッテリーが出火。 |
4 | 自動車内 | 高温の車内に放置されていたモバイルバッテリーが発火。 |
あの日、筆者が使っていたモバイルバッテリーは、特に安物でもなければ、雑に扱っていたわけでもありませんでした。
にもかかわらず、突如として異常発熱し、発火寸前まで至ったのです。いったい何が原因だったのか──その答えは、思った以上に奥深いものでした。
モバイルバッテリーには主に「リチウムイオン電池」が使われています。この電池はエネルギー密度が高く、コンパクトなサイズでも高性能ですが、そのぶん非常にデリケートです。
高エネルギー密度を持つため、過充電や過放電、物理的衝撃、劣化、水濡れなどが発火の原因となる可能性があります。
つまり、、少しの不具合が大事故につながる可能性があるのです。
リチウムイオン電池の特性
リチウムイオン電池は、内部で化学反応を繰り返しながら電力を供給しますが、何らかの原因で内部ショートが起きると、発熱・発火に至る危険があります。
とくに「過充電」や「過放電」が繰り返されると、内部のバランスが崩れ、発火リスクが高まるとされています。
物理的な衝撃・劣化・水濡れ
バッテリーを床に落としたり、カバンの中で強い圧力がかかったりした場合、内部セルが損傷し、それが後々になって発火につながるケースもあります。
また、水滴が差し込むような環境での使用や、劣化した製品の放置も要注意です。
粗悪品やPSEマークなしの製品
最も見落とされがちなのが、「安すぎる製品」の存在です。ノーブランドや一部の海外製モバイルバッテリーには、安全試験をクリアしていないものが多く、日本の電気用品安全法で義務づけられているPSEマークすらついていないこともあります。
事故のリスクを大幅に下げるには、このPSEマークの有無をまず確認すべきです。
発火の前兆となるサイン
以下のような症状が出ていたら、それは発火の“予告”かもしれません。
- 異常な発熱
- 本体が膨らんでいる
- 焦げ臭いニオイがする
- 充電中に触れないほど熱くなる
もし1つでも当てはまるなら、使用を中止し、安全な方法で処分するべきです。
発火の確率はどれくらい?実際の数字と背景
「そんなに心配するほどのことじゃない」──そう思っていたのは、筆者もかつて同じでした。
確かに、ニュースで見るモバイルバッテリーの発火事故は稀にしか起こらないように感じます。では実際、どのくらいの確率で発火しているのでしょうか?
統計的には「1万〜数万台に1台」の可能性
一般的に、モバイルバッテリーに使用されるリチウムイオン電池の発火確率は、数百万台に1台程度とされています。ただしこれは、安全基準を満たした製品が適切に使用された場合の目安であり、粗悪品や誤った使い方をした場合には、この確率が大きく上昇する可能性もあります。
しかし実際には──
- バッテリーの個体差
- 利用環境(高温多湿、直射日光など)
- 使い方(繰り返し充電、粗雑な取り扱い)
- 製品そのものの品質(PSEマークの有無)
といった要素によって、この確率は大きく変動します。
実際の発火事故の事例
たとえば、空港での持ち込み時に発煙が起きて離陸が遅れた、寝ている間に充電中のバッテリーから出火したなど、過去にはニュースになるレベルの事故も報告されています。
特にノーブランドの安価な製品は、販売後すぐにリコールが出された事例もあります。
「たまたま運が悪かった」では片付けられない理由
筆者の体験でもそうでしたが、「まさか自分のが発火するなんて」というのがほとんどの人の本音です。
でも実際に起きると、ほんの数秒で火花が飛び、最悪の場合は火災へとつながります。
確率は低くとも、「0ではない」。
それが、私たち一人ひとりが認識しておくべき現実です。
安全に使うために今すぐできる対策と選び方
モバイルバッテリーの発火は、「ごくまれな不運」ではなく、「避けられる事故」です。
実際に筆者も、正しい知識があれば防げていたと今になって痛感しています。
ここでは、発火事故を防ぐために今日から実践できるポイントを整理します。
信頼できるメーカー品を選ぶ
価格の安さだけで選ぶのは危険です。
特にネット通販では、PSEマークのない商品や、ブランド名すら怪しい製品が多く出回っています。
・日本の安全基準を満たした「PSEマーク」がついているか
・ANKER(アンカー)やcheero(チーロ)、エレコム、バッファローなど、信頼できる企業製かどうか
この2点を最低条件にして選びましょう。
充電・保管・持ち運びの基本ルール
正しい使い方をするだけで、発火のリスクは大幅に減らせます。
- 寝ながら充電しない:就寝中の事故は命にかかわる
- 充電しっぱなしにしない:満充電後も通電し続けると発熱リスクが上がる
- 直射日光・高温になる場所に放置しない:夏の車内は特に危険
- 衝撃を与えない:落下による内部破損は発火の原因に
避けるべきNG行動まとめ
- 100均で購入した不明製品の使用
- 破損・膨張しているのに使い続ける
- 他人の中古バッテリーを譲り受ける
バッテリーは「消耗品」です。
たとえ充電できていても、内部劣化が進んでいる可能性は大いにあります。
災害時・外出時の安全性も意識しよう
避難所や出先で、モバイルバッテリーが原因で火災が起きれば、自分だけでなく周囲にも被害が及びます。
安全性を意識することは、他人への配慮でもあります。
さいごに|発火事故を他人事にしないために
「まさか自分がこんな目に遭うとは思わなかった」──
筆者がモバイルバッテリーの異常加熱に気づいたとき、まず浮かんだのはこの一言でした。
発火事故の多くは、使用者のちょっとした油断や無知から始まります。
そしてその代償は、スマホの故障や持ち物の焼失だけでは済まされません。
最悪の場合、火事や人命に関わる深刻な被害へとつながる可能性もあるのです。
この記事を読んでくださったあなたが、今まで以上にモバイルバッテリーの**「選び方」「使い方」「処分の仕方」**に意識を向けてくれたなら、筆者の失敗にも意味があったと言えるでしょう。
「便利な道具」だからこそ、正しい使い方を知ることが重要です。
そして、安さや手軽さだけを理由に選ぶのではなく、“安全性”を最優先にする視点を持ってください。
それが、あなた自身と周囲の人々の安全を守ることにつながります。